荒城語る戦国哀史 小谷山 滋賀県湖北町 [関西の里山を歩く]

今回の見どころ (1)望笙峠(2)小谷山城跡(3)小谷城戦国歴史資料館
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湖北の雄、浅井氏との確執である。信長、浅井長政、お市の方、木下秀吉らが演じる物語は、虚実を織り交ぜて数々の時代小説やテレビ番組が好んで取り上げるところであり、そのクライマックスになるのが姉川の合戦に続く小谷(おだに)城の落城である。
小谷城は、その堅固さにおいては戦国時代でも屈指の山城であったという。現在では、小谷山(四九五メートル)の南側斜面を中心に点在する遺構から往時の姿がしのばれるが、それだけに空想を膨らませながら歩くと荒城の風情が味わえる。
北陸本線河毛(かわけ)駅から、小一時間ほど歩くと登山口に至る。尾根道のコースをたどると、琵琶湖に浮かぶ竹生島がほぼ正面に見ることができる望笙(ぼうしょう)峠や、昭和初期に「小谷城址」として国の史跡に認定された際に建立された記念碑などの見どころが続く。小谷城の遺構が集中するのもこのコースで、番所をはじめ、御茶屋、御馬屋、本丸など、尾根沿いを線状にたくさんの曲輪(くるわ)跡が連なり、山城特有の連郭式縄張りをかいま見ることができる。
中でも特筆されるのは、大広間と桜馬場と呼ばれる二つの広場である。眺望もよく、現代的な視点から見て心地よい休憩スポットとなっているだけでなく、大広間の方は小谷城の中核施設であったという。あるいは、歴史ドラマの視点に傾くのであれば、大広間に上がる手前で右に折れて、赤尾屋敷跡をのぞいてみるのもいいだろう。ここは浅井長政が自刃をして果てた場所と伝えられている。
小谷山の散策コースは、この尾根道のほかに、屋敷群が並んでいたとされる谷筋(清水谷)のコースがある。こちらはコースからの眺めという点ではやや魅力に欠けることもあるので、登路に尾根道を利用してゆっくり時間をかけ、下山は清水谷を下りるのがいいだろう。清水谷の下山口には、今年の秋に小谷城戦国歴史資料館がオープンしており、小谷城関連の絵図や考古史料が展示されている。
▼毎年9―11月は、番所跡より下の登山道(図の点線部分)は立ち入り禁止。番所跡までは車道をたどる。問い合わせは湖北町役場まちづくり課TEL0749・78・8305
※この記事は過去に神戸新聞に掲載されたものです。
内容については変更になっている場合がありますので、おでかけの際はあらかじめご確認ください。
多様な海岸線眼下に 但馬御火浦海岸 新温泉町・香美町 [関西の里山を歩く]
多様な海岸線眼下に 但馬御火浦海岸 新温泉町・香美町
今回の見どころ (1)鋸岬・旭洞門(2)御崎の灯台(3)余部鉄橋
但馬御火浦海岸の近畿自然歩道は「漁火のみち」と名付けられている。本来は香美町の御崎(みさき)と新温泉町の三尾(みお)を結ぶ舗装された一般道。山道を歩くハイキング的な雰囲気は無くても、十一・三キロのコース上では随所で広大な水平線と急しゅんな絶壁が眺められる。
コース上での見どころを具体的に紹介してみよう。まずは三尾付近では鋸岬(のこぎりみさき)。その名前のとおり、海に向かって長いノコギリのように鋭く突き出した岩礁が岬となっていて、中央付近にある洞穴(旭洞門)も肉眼で観察できる。御崎側に目を移せば御崎の灯台(余部埼灯台)がある。日本で一番高い場所にある灯台だ。近くの広場からは、鎧ノ袖や県最北端の猫崎から京都府の丹後半島方面に及ぶリアス式海岸の様相が手に取るように眺めることができる。なお御火浦海岸にあって、世界最大級の大きさとも言われている釣鐘洞門(国指定天然記念物)は、コース上からでは眺めることができない。
もう一つ、今回のコースでの見どころとして忘れるわけにいかないのが余部鉄橋。四十一メートルの上空を走る列車を地上から見上げるにせよ、さらに高い展望スポットから見おろすにせよ、ぜひ目に焼き付けておきたい景色である。すでに架け替え工事(二〇一〇年完了予定)が始まっていたが、鉄橋そのものはまだ往年の姿で見ることができた。
最近、この但馬御火浦海岸に、東部の県道豊岡瀬戸線などを加えた道が「但馬漁火ライン」として「日本風景街道」に登録された。全国的にもまれな景観美として認定を受け、訪問者の増加が期待される。
ところで、本欄では、日帰りコースとして各地のスポットを取り上げてきたが、今回は宿泊プランをお勧めする。というのも、周辺に香住温泉郷や浜坂温泉郷があるから。加えてこの季節は旬のマツバガニが堪能できる。(深呼吸クラブ・吉田尚)
▼冬場は日本海から強風が吹きつけるので防寒対策には十分心掛けたい▽問い合わせは浜坂観光協会TEL0796・82・4580▽香住観光協会TEL0796・36・1234
※この記事は過去に神戸新聞に掲載されたものです。
内容については変更になっている場合がありますので、おでかけの際はあらかじめご確認ください。
記念碑的岩場も点在 芦屋ロックガーデン 芦屋市 [関西の里山を歩く]
記念碑的岩場も点在 芦屋ロックガーデン 芦屋市
今回の見どころ (1)中央尾根・風吹岩(2)馬の背尾根・岩梯子(3)キャッスルウォール
![000005925[1].jpg](https://blog.so-net.ne.jp/_images/blog/_93c/hotken/0000059255B15D.jpg)
風吹岩から眺めた荒地山。山頂付近に巨岩が点在している=芦屋市 |
高座の滝と風吹岩の間には花崗(かこう)岩が階段状に続く個所があり、「芦屋ロックガーデン」とも呼ばれる。ダイナミックな登高感や芦屋市街を一望する眺望など、六甲山ハイキングの中でも随一の人気コースである。だが、その名を正確に紹介するなら、ロックガーデンの中の中央尾根(中央稜(りょう))コースと言うべきだろう。
そもそも「芦屋ロックガーデン」とは、わが国にロッククライミング技術を紹介し、近代登山の父とたたえられる藤木九三(くぞう)(一八八七―一九七〇年)による命名で、中央尾根のほかに高座谷およびその支流一帯の岩場が含まれる。そこで中央尾根コースなどで岩場歩きの雰囲気に慣れれば、ロックガーデンを広く歩き回ってみてはどうだろう。訓練を要する岩登りまでいかなくても、先人たちが通い詰めて技術を磨いた「ゲレンデ」を見て回ればアルピニズムの雰囲気に触れることもできる。
中央尾根以外での具体的なコースについて。この近辺にあってハイキングの範囲で紹介されるところでは、馬の背尾根から荒地山を経て魚屋道に合流するコースがある。ロックガーデンの中央尾根より少し難度が高く、馬の背の核心部である岩梯子(いわばしご)周辺では岩登り的な動作も要求される。それでも三点支持などの基本動作が十分であれば、岩登り未経験者でも対応できる。
あるいは尾根や谷の位置関係を把握している場合は、ハイキングコースから外れて高座谷に入ってみるのも面白い。しっかりとした踏み跡があり、今日のクライマーたちにもトレーニングの場を提供しているキャッスルウォールが間近に見上げられる。
なおロックガーデンを構成するもう一つのエリアとして、高座谷の支流の地獄谷周辺がある。「ゲートロック」や「A懸」といったアルピニズム黎明(れいめい)期の記念碑的な岩場が点在するのだが、アプローチ自体にやや本格的な岩登りの要素があることに加えて、地形が複雑なので、こちらに入るのは六甲を熟知したガイド同伴のときのみにしていただきたい。(深呼吸クラブ・吉田尚)
![000008128[1].jpg](https://blog.so-net.ne.jp/_images/blog/_93c/hotken/0000081285B15D-d7e7f.jpg)
▼馬の背尾根は一般的なハイキングコースだが、下りでの利用や、雨上がりなど滑りやすい時の利用は避けたほうがよい▽高座の滝周辺の問い合わせは大谷茶屋TEL0797・34・1783
※この記事は過去に神戸新聞に掲載されたものです。
内容については変更になっている場合がありますので、おでかけの際はあらかじめご確認ください。
紅葉に映える奇岩 寒霞渓と星ケ城山 香川県小豆島町 [関西の里山を歩く]
紅葉に映える奇岩 寒霞渓と星ケ城山 香川県小豆島町
今回の見どころ (1)寒霞渓の紅葉(2)星ケ城山からの眺め(3)遊歩道の岩石群

星ケ城山東峰より播磨灘を望む。晴れた日には明石海峡大橋も確認できる=香川県小豆島町 |
寒霞渓へは姫路港よりフェリーとバスで二時間半、京阪神からの小旅行として適当な距離であろう。寒霞渓山頂へは、谷全体が見渡せるロープウエーも良いが、乗車時間は五分と短いので、ハイキングがお勧め。
遊歩道は「表十二景」と「裏八景」の二コースがあり、いずれもコンクリート舗装され分かりやすい道だ。表コースには画帖石や烏帽子岩など十二カ所、裏には松茸岩や石門など八カ所の見どころがある。両コースはロープウエー山頂駅北側の三笠園地で合流する。同園地には、総工費一億円の名所のトイレも。
その後は、園地より北側に見える三笠山を越え、瀬戸内最高峰の星ケ城山(八一七メートル)東峰を目指す。道は樹林帯の地道となるが整備され歩きやすい。同山は西峰もある双耳峰でそれぞれに、島の平和と繁栄を祈願して祀(まつ)られた阿豆枳(あずき)島神社がある。阿豆枳が小豆(あずき)となり、鎌倉時代に小豆島(しょうどしま)と呼ばれ始めたようだ。特に東峰山頂からの景色は素晴らしく、播磨灘が一望できる。
島特産のオリーブ、そうめん、佃煮(つくだに)、しょうゆに加え地場産業として知られるのが石材。鎌倉時代に切り出しが始まり、大坂城築城にも使用された。福田港から寒霞渓への道すがら、白い雛壇(ひなだん)のように切り出された採石場が視界に飛び込むだろう。
良質の岩はロッククライミングのゲレンデとしても有名。拇指(おやゆび)岩や仁寿峰、福田港北側には吉田の岩場がある。花崗岩(かこうがん)の白い岩が立ち並ぶ景色は見るだけでも心が弾む。近くにキャンプ場や温泉もあるので、マイカーなら一泊するのも良い。
この岩場に二十年来通う知人によると「昔、キャンプをしていると、テントや寝袋、登山具を珍しがって夕方になるとやんちゃな子供たちが訪ねてきた。そのうち大人もやって来て、家に招かれ食事をごちそうになったりした」という。週末の訪問者を気さくに受け入れる人情味豊かな気質は、瀬戸内の温暖な気候がはぐくむのだろうか。
町から赴任してきた先生と、島の児童との心の交流を描く壺井栄の名作「二十四の瞳」もこの地が舞台だ。島の南に岬の分教場や映画村があり時間が許せば訪れたい。(深呼吸クラブ・森中あゆみ)
▼バスの便が悪いので事前確認を。問い合わせは小豆島町役場企画財政課TEL0879・75・1800
※この記事は過去に神戸新聞に掲載されたものです。
内容については変更になっている場合がありますので、おでかけの際はあらかじめご確認ください。
野仏が醸し出す静寂 瀞川渓谷 香美町村岡区 [関西の里山を歩く]
野仏が醸し出す静寂 瀞川渓谷 香美町村岡区
今回の見どころ~ (1)双身の滝など(2)渓流沿いの石仏群(3)瀞川山からの展望

瀞川渓谷沿いに並ぶ石仏。表情は瀬音に耳を澄ましているかのようだ=香美町村岡区 |
しかし、にぎわいをみせるのもスキー場や山ろくのロッジ周辺。野間峠を越えて瀞川山の辺りになると静かな山歩きが満喫できる。無雪期なら山の静けさはひとしおで、人気スポットの目と鼻の先に残された真空地帯のような印象さえ醸し出す。
瀞川山をメーンとして山歩きの計画を立てるとすれば、鉢伏山から野間峠を越えての縦走形式にまとめるのが一般的なケースだが、少し趣向を凝らすのであれば、瀞川山の北側にある瀞川渓谷をメーンにして、そこへプラスアルファで瀞川山を追加する形でのコース設定にすることもできる。
瀞川渓谷の見どころは、まずは美しい滝が続いている点。滝が多いのは、懐の深い山々が重なる但馬地方の特徴でもあるが、知名度の低い渓谷にも見ごたえのある名瀑(めいばく)が潜んでいる。瀞川渓谷もそうした場所の一つ。二筋に分かれる水流が美しい「双身の滝」、落差五〇メートルほどの全容を滝壺(たきつぼ)の間近から見上げることができる「瀞川の滝」(不動の滝)など、固有名を持つ滝もある。
また道中のここかしこに石仏が置かれているのも、この渓谷の空気に独特の味わいを与えている。渓流沿いの道が整備された折、地域繁栄の願いを込めて地元板仕野(いたしの)の篤志家が置いたこれら石仏たちにも、「瀞川渓谷十三仏」という名前が与えられている。
この瀞川渓谷を含めた瀞川山への行程だが、谷筋からそのまま尾根に突き上げるわけにはいかない。最奥部の瀞川の滝で折り返してスタート地点の瀞川稲荷へ戻ってくることになる。瀞川山へは改めて山腹を迂回(うかい)する登山道をたどって尾根上の林道(瀞川・氷ノ山林道)に出てから、山頂までを往復することになる。
なお時間的に制限がある場合は、瀞川渓谷だけの往復にとどめたり、瀞川・氷ノ山林道に出た後は瀞川山を省略してそのまま「木の殿堂」方面に下りるなど、状況に応じて行程を縮小することもできる。
(深呼吸クラブ・吉田尚)

▼車の場合は国道9号ハチ北口から板仕野に入り、瀞川稲荷まで進入可。
※この記事は過去に神戸新聞に掲載されたものです。
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この記事を書いている、深呼吸クラブ関西地区インストラクター・吉田尚氏が企画同行する、関西の里山歩き企画があります。3名からの実施が可能ですので、ご検討下さい。詳しくは、下記の一覧表をご参照下さい。
■関西の里山・歴史・春の花歩きシリーズ ~“関西の里山を歩く”著者でもある京都在住の 吉田 尚インストラクター同行企画~ (3名より出発予定) | |||||||
日 時 | タイトル名 | 広島駅集合 | 費用 | 募集 | |||
04月19日(土) | 吉野宮滝の道 | 午前5時40分 | 27000円 | 3名出発 | |||
05月08日(木) | 大和葛城山 | 午前5時40分 | 28000円 | 3名出発 | |||
05月24日(土) | 京の奥座敷探訪 | 午前6時40分 | 27000円 | 3名出発 | |||
06月14日(土) | 六甲山そぞろ歩き | 午前6時40分 | 25000円 | 3名出発 | |||
06月28日(土) | 京都八十八所巡礼 | 午前7時40分 | 26000円 | 3名出発 | |||
都会の魅力、再発見 武庫川左岸 宝塚、伊丹、尼崎市 [関西の里山を歩く]
都会の魅力、再発見 武庫川左岸 宝塚、伊丹、尼崎市
今回のみどころ~ (1)宝塚観光ダムと噴水(2)六樋の顕彰碑(3)武庫大橋
尼崎市と西宮市を結ぶ武庫大橋。アーチ部の意匠に穏やかな主張が感じられる=尼崎市大島 |
支流を越える橋がなかったり、遊歩道未整備などの事情から、一部では河川敷を離れる必要もあるが、ほとんどの個所では河川敷を歩くことが可能。そうしたコースだから、毎日の散歩に使っている人も少なくない。それでも散歩の範囲を超えた長い距離を歩いてみると、身近なところに眠っている、ちょっとした魅力の再発見にもつながる。
スタートの阪急宝塚駅・宝塚大橋周辺は、大劇場が近く観光客も多い。観光ダムや観光噴水(ビッグフェニックス)などはガイド雑誌でもよく紹介されており、若い人たちの間にも人気がある。
華やかな歌劇場エリアを離れて、武庫川に天王寺川が合流してくるあたりまでくると、遊歩道が未整備な個所も。河川敷を離れ、交通量の多い車道沿いを通る間は、ウオーキングには不向きなところだが、この水系における水利用の様相を伝える「六樋の顕彰碑」などに目がとまると、郷土史としての武庫川を意識するきっかけにもなる。
河川敷に戻り、新幹線の高架や甲武橋を過ぎると、雰囲気は再び“公園風”になる。阪神武庫川駅までの約五キロはジョギングコースとしてもよく整備されている。
武庫川に架かる橋は河川敷のコース上で距離を測る格好の目安なのだが、橋の姿で目を引くのは、国道2号の武庫大橋である。大阪・神戸エリアの建造物を紹介する文脈では、時折「阪神間モダニズム」という言葉と出合う。大正時代から昭和初期にかけて、西宮や芦屋など阪神間に勃興(ぼっこう)した文化様式全般を指すこの言葉には、建造物についていえば、富裕層の豪邸や瀟洒(しょうしゃ)な洋館のイメージが付いてくる。一九二六年に完成した武庫大橋は、阪神間モダニズムの時代に属するものの、同様式の典型例とは一線を画している。シンプルな美しさをたたえており、現代の風景にも自然に溶け込んでいる。
なお橋の話を続けるならば、ゴールとなる阪神武庫川駅は橋の上にホームがつくられており、「近畿の駅百選」にも選ばれている。川面を見下ろしながら電車を待つのも、川辺ウオーキングの締めくくりにはふさわしい。
(深呼吸クラブ・吉田尚)
▼阪急宝塚駅からは、宝塚大劇場に続く「花のみち」の前で右折すると、道なりに河川敷へ下りることができる。大阪湾(鳴尾浜)までのコースを設定する場合は右岸に移る。所要はプラス約1時間。
▼深呼吸クラブのホームページ http://www.shinkokyu.info/
※この記事は過去に神戸新聞に掲載されたものです。
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野仏が醸し出す静寂 瀞川渓谷 香美町村岡区 [関西の里山を歩く]
野仏が醸し出す静寂 瀞川渓谷 香美町村岡区
今回の見どころ~ (1)双身の滝など(2)渓流沿いの石仏群(3)瀞川山からの展望
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瀞川渓谷沿いに並ぶ石仏。表情は瀬音に耳を澄ましているかのようだ=香美町村岡区 |
しかし、にぎわいをみせるのもスキー場や山ろくのロッジ周辺。野間峠を越えて瀞川山の辺りになると静かな山歩きが満喫できる。無雪期なら山の静けさはひとしおで、人気スポットの目と鼻の先に残された真空地帯のような印象さえ醸し出す。
瀞川山をメーンとして山歩きの計画を立てるとすれば、鉢伏山から野間峠を越えての縦走形式にまとめるのが一般的なケースだが、少し趣向を凝らすのであれば、瀞川山の北側にある瀞川渓谷をメーンにして、そこへプラスアルファで瀞川山を追加する形でのコース設定にすることもできる。
瀞川渓谷の見どころは、まずは美しい滝が続いている点。滝が多いのは、懐の深い山々が重なる但馬地方の特徴でもあるが、知名度の低い渓谷にも見ごたえのある名瀑(めいばく)が潜んでいる。瀞川渓谷もそうした場所の一つ。二筋に分かれる水流が美しい「双身の滝」、落差五〇メートルほどの全容を滝壺(たきつぼ)の間近から見上げることができる「瀞川の滝」(不動の滝)など、固有名を持つ滝もある。
また道中のここかしこに石仏が置かれているのも、この渓谷の空気に独特の味わいを与えている。渓流沿いの道が整備された折、地域繁栄の願いを込めて地元板仕野(いたしの)の篤志家が置いたこれら石仏たちにも、「瀞川渓谷十三仏」という名前が与えられている。
この瀞川渓谷を含めた瀞川山への行程だが、谷筋からそのまま尾根に突き上げるわけにはいかない。最奥部の瀞川の滝で折り返してスタート地点の瀞川稲荷へ戻ってくることになる。瀞川山へは改めて山腹を迂回(うかい)する登山道をたどって尾根上の林道(瀞川・氷ノ山林道)に出てから、山頂までを往復することになる。
なお時間的に制限がある場合は、瀞川渓谷だけの往復にとどめたり、瀞川・氷ノ山林道に出た後は瀞川山を省略してそのまま「木の殿堂」方面に下りるなど、状況に応じて行程を縮小することもできる。
(深呼吸クラブ・吉田尚)
▼車の場合は国道9号ハチ北口から板仕野に入り、瀞川稲荷まで進入可。
※この記事は過去に神戸新聞に掲載されたものです。
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山の息吹存分に満喫 三室山 宍粟市千種町 [関西の里山を歩く]
山の息吹存分に満喫 三室山 宍粟市千種町
今回の見どころ~ (1)東河内の里山風景(2)三室山頂からの眺め(3)三室の滝
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流水が造形美をつくる三室の滝=宍粟市千種町 |
中国山地の東南端に位置する千種町は、県道の通る南方向を除く三方を山に囲まれた、文字通り山あいの町である。そうした環境も影響してのことだろうか、民俗学の草創期である昭和前半はもとより、昭和四十年代あたりでも古い民俗が伝えられている土地として注目されることがあった。近年は地方振興事業などによって様相は変わりつつあるが、それでも古い山村の面影が残っている。
千種川の上流、鳥取との県境にあって県内二番目の標高を持つ三室山(一三五八メートル)は、この千種町東河内地区からのルートが唯一の登山道である。北側の氷ノ山一帯と一括(ひとくく)りにされて氷ノ山後山那岐山国定公園に含まれるが、山頂付近までスキー場開発の進んだ氷ノ山エリアとは対照的に、三室山では静かな山歩きが楽しめる。
スタート地点の三室高原青少年野外活動センター跡地を出てからずっと急勾配(こうばい)が続くこと、山頂に出る最後の所が岩場になっていて、固定されている鎖を頼りに越えねばならないことなど、全くの初心者には手ごわいかもしれない。しかしそれでも深い木立の中を流れ落ちてくる河内(こうち)川(千種川支流)源流の趣や、最後の薮(やぶ)を抜けて飛び出したとき、視界が四方に広がる爽快感(そうかいかん)などを思えば、いくつかのマイナス要素を補って余りある好ルートである。
登山コース以外では、山麓(さんろく)にある三室の滝がこのエリアでの見どころ。落差は十メートルそこそこの小ぶりなものだが、水量に比べて川底が浅いためなのか、流水が滝壺(たきつぼ)の岩にはじかれて激しく跳ね上がり、あたかも水中から噴射されているかのような姿を呈している。
また西河内にある天児屋(てんごや)たたらの里学習館などは、この地域の歴史を知るうえで興味深い。時間的な余裕のある場合は、足を延ばしておきたい。
(深呼吸クラブ・吉田尚)
▼マイカー利用の場合は青少年野外活動センター跡地の駐車場まで進入可
※この記事は過去に神戸新聞に掲載されたものです。
内容については変更になっている場合がありますので、おでかけの際はあらかじめご確認ください。
見下ろす湖 絶景 蓬莱山周辺(大津市) [関西の里山を歩く]
見下ろす湖 絶景 蓬莱山周辺(大津市)
今回の見どころ~ (1)琵琶湖の眺め(2)蓬莱山(3)小女郎池
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悲しい伝説が残る静寂の小女郎池=滋賀県大津市 |
比良山系は、「奥比良」「北比良」「南比良」の三つの山塊が南北二十五キロのY字形の連山を形成している。蓬莱山(ほうらいさん)(標高一一七四メートル)は、Y字の足の真ん中辺りに位置する。蓬莱山頂へは難易度の違うコースがいくつもある。
西側の大津市葛川坊村(かつらがわぼうむら)町から白滝谷を沢沿いに歩き、夫婦滝を経由して汁谷(しるたに)に至るコースが今の時期なら爽(さわ)やかだ。ただし、飛び石伝いに歩く箇所など、難度の高いコースが続く。経験者との同行が望ましい。春の汁谷は鮮やかなピンク色のクリンソウ群生やシャクナゲ、ミズバショウが見られる花の谷となる。
ほかに小女郎谷(こじょろうたに)や伊藤新道などコースは整備されているが、いずれにせよ登り最低三―四時間、下り二時間は心積もりしておきたい。打見山から蓬莱山一帯は、園地として開発されアスレチックなどの遊具が設置されている。
この先小女郎峠へは、一変してハイカーのみの静かな世界で、笹(ささ)に覆われた稜線(りょうせん)から見下ろす琵琶湖の展望はすばらしい。湖から一気にせり上がった高度感に十分な満足感が得られ、つらかった登りの何よりのご褒美となるはずだ。小女郎池へは小女郎峠を西に歩いてすぐ。
こんな伝説が地元に残る。「昔、久右衛門と、お孝という夫婦がいた。ある日お孝は小女郎池で美青年と出会い、以来、池に通うようになる。美少年は池の主で大蛇の化身。夫に事実を知られ、お孝は自分の左眼をくりとり、『赤ん坊がお乳を欲しがったらこれをしゃぶらせてほしい』と言い残し池に入っていった」。いつしか小女郎池と呼ばれるようになったという。不貞をしたお孝の伝説が悲哀の物語として残るのが釈然とせず、しばし池にたたずみ物思いにふけった。
人間の出来心の罪深さ、愚かさの戒めとも理解できるし、実は死神である大蛇にとり憑(つ)かれたお孝の、死に際の悲しい話とも解釈できる。山頂の喧噪(けんそう)とは裏腹に、小女郎池は悲哀に満ちた伝説にふさわしい静寂に包まれていた。(深呼吸クラブ関西事務局・森中あゆみ)

アドバイス びわ湖バレイスキー場のアルプスゴンドラを利用すれば容易に山頂まで上がれるが、現在ロープウェーの付け替え工事で運休中。再開は冬の予定。
深呼吸クラブのホームページ http://www.shinkokyu.info/
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神宿る、無数の幹 糸井渓谷(朝来市) [関西の里山を歩く]
神宿る、無数の幹 糸井渓谷(朝来市)
今回の見どころ~ (1)糸井の大カツラ(2)不動の滝(3)東床尾山
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地域の神木として大切にされている大カツラ=朝来市和田山町
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樹冠、樹高ともに三十メートルを超え…などと客観的な数値を持ち出すと味気ないが、主観的な印象として述べるとすれば、宮崎駿監督のアニメ映画にたびたび登場する、深い森の奥に眠る神秘的な巨木を思い浮かべてしまう。
実際には大カツラの真ん前まで立派な林道が通っており、手前六百メートルあたりまでは車でも進入できるので状況はまったく異なる。にもかかわらず、奇妙な連想を誘うほどの風格が備わっている。
落葉樹なので、丸裸になっている季節であればその風格は半減するものの、緑の装いに包まれているときに訪れると、主幹が朽ち果てる前、深い森の中に屹立(きつりつ)していたころの情景を空想してしまう。糸井の大カツラ探訪は、和田山駅から竹ノ内に向かうバスの便数が少ないということもあって、マイカーを使うのが一般的だが、周辺を散策しながら徒歩でアプローチするのも悪くない。
竹ノ内バス停から舗装路沿いに続く糸井渓谷の滝や淵(ふち)も見どころだし、コース上から眺めることのできる範囲に限っても、不動の滝をはじめ、たくさんの小滝が豊かな表情を見せてくれる。それらを楽しみながら、のんびり歩いてきた後で目にする大カツラは、行程の締めにふさわしい重みがある。
なお大カツラの場所までやってくると、併せて東床尾山(八三九メートル)の山頂まで足を延ばしたくなる。しかし、山歩きに慣れていない初心者であれば自重したほうがいいだろう。山頂までの登山道は、近畿自然歩道の一部として、かつては整備されていたのだが、二〇〇四年十月の台風23号によって、渓流沿いのあちらこちらで寸断され、現在もまだ補修が追いついていないからだ。
快晴に恵まれたときは、日本海まで一望できるという山頂は魅力的なのだが、現状の登山道では、安全に登って下りてくるには十分な技量が求められる。
(深呼吸クラブ・吉田尚)

東床尾山登山道についての問い合わせは、和田山町観光協会TEL079・672・4003
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